【読書レビュー】僕と妻の1778話:眉村卓

読書レビュー

最愛の妻へ捧げる愛の詰まったSF短編集

こんな方におすすめ

・サクッと1冊本を読みたい方
・小説家を目指している方、物語を書かれている方
・おすすめ短編集を探している方
・SF小説が好きな方
・泣きたい方

本書について(感想)

本書の作者である眉村卓さんが悪性腫瘍により余命1年と告げられた奥様のために、

短い物語(400字の原稿用紙3枚以上、手書き)を毎日1話書くことを始めました。

これらの「妻に捧げた短編」は、1997年7月〜2002年5月の約5年間に計1778話が書かれました。

本書ではこのうちの52話が収録されています。

(本書とは別の「妻に捧げた1778話(新潮新書版)」には別の短編19話が収録されています)

すべての短編は、基本的に「笑い」を心がけて作られたそうです。

各物語の後に眉村卓さんによる短い解説や、物語についてのエッセイなども書かれています。

このエッセイも面白くて、とりわけ「ネタの見つけ方」、「物語の作り方」、「話の広げ方」など

物語の書き方については作家さんの心理が垣間見れて「へえ〜」と思うところが多々ありました

物語の中には、「長編バージョンも読んでみたいなあ」と思う物語もいくつもあります。

お笑い芸人のカズレーザーさんもおっしゃっていましたが、最後の一文でグッときますね

本書の最後には、眉村夫妻の長女である村上知子さんの解説があり、こちらも素敵です。

本編ではもちろん眉村卓さんからの視点で何もかもが語られているわけですが、

知子さんの解説では娘からの視点で「両親」が語られます。

そして、読了後は優しい気持ちにさせてくれます

【ネタバレあり】オススメの物語

ミニミニロボット
時計やカメラをバラバラにして増殖するミニミニロボット(5ミリくらい)の話。

ミニミニロボットにいたずらっぽさが出ていて好きです。

ゲラ修正
この物語が好きというというか、何かを創る際の苦悩が共感できます。
乱世型社員
平時にはぱっとせず、与えられた仕事で手一杯の社員は、非常時のために存在するという話。

「関東大震災時には、実際にこうした乱世型社員がリーダーシップをとって活躍した例が複数確認された」という解説も含めて興味深いです。

走る植動物
ある日突然送られた新種の植動物に、世話をしなかったという理由で襲撃される話。

めちゃくちゃな設定と世界観が後に残ります。

早朝の喫茶店で
早朝の喫茶店にたまたま来た男性が、過去から来たかもしれない別の男性に出会う話。
奇行の人
陰ながら町の平和を守っていたかもしれない変な人「Jさん」の話。

この「Jさん」の姿勢になんだか愛があるなぁと感じます。

共に喫煙
深夜の喫煙室で、たぬき、キツネ、イヌ、ネコなどのお化けとタバコを吸う話。

ヘビースモーカーである作者が実際の生活で喫煙スペースが激減してきたことを背景に

好き放題に書いてみたとのことです。

その解説を読んでからもう1度この物語を読むと、

「お化け側の視点で書いたのかな?」と思って笑ってしまいます。

まとめ

SFの短編小説をお探しの方、そして優しい気持ちになりたい方には是非ともオススメです。
本作が好きな方は、世界観が似ている短編集「うれしい悲鳴をあげてくれ」(いしわたり淳治:ちくま文庫)も好きだと思います。
 

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